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講師業務の関連知識に関する書籍

コンプライアンス研修の小ネタとして使える話など、講師を務める際に役立つ書籍をご紹介します。

誤った判断(意思決定)のメカニズム

企業不祥事の背景となる愚かな意思決定がなぜ起こるのかを分析した本です。

失敗の本質: 日本軍の組織論的研究
(戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎 著 中公文庫)

旧日本軍の作戦行動をもとに、日本型組織の宿痾ともいうべき意思決定の欠陥をあぶりだした名著です。初版の発行が1984年ですので、超ロングセラーと言えます。「ノモンハン事件」「ミッドウェー海戦」「ガダルカナル作戦」「インパール作戦」「レイテ海戦」そして「沖縄戦」といった日本軍による無残な失敗を取り上げ、その経緯とどこに失敗の原因があったのかを分析します。
コンプライアンス経営で防ぐべき企業不祥事の多くはこの日本型意思決定の失敗によるものだと言えます。コンプライアンス研修で事例紹介を行なう際に、ここで紹介される失敗のメカニズムを知っていれば、日本人が本質的に持っている意思決定の弱点に触れながら解説ができ、研修の納得感も高まると思います。
(発売日 1991.08.01)

組織の不条理 - 日本軍の失敗に学ぶ
(菊澤 研宗 著 中公文庫)

旧日本軍の失敗を扱ったロングセラーですが、失敗の本質とは異なる切り口から分析が行われています。一言で言うと、「失敗の本質で分析された失敗メカニズムは、(人間の本質に照らして)やむを得ないものであった」というものです。もちろん「やむを得ない」で済ませてよいということではなく、「正しい意思決定とは、そう簡単な話ではないですよ」という警告の書としてと捉えることができます。
本書では人間とは「全体合理性と個別合理性がコンフリクトを起こすとき、個別合理性を追及する」「正当性(論理性)と効率性がコンフリクトを起こすとき、効率性を追及する」「長期的帰結と短期的帰結がコンフリクトを起こすとき、短期的帰結を追及する」という誰しもが身につまされる現実を数々の事例を通じて突き付けてきます。
失敗の本質とあわせて読むことで、意思決定のける失敗の本質がより鮮明に理解できるはずです。
(発売日 2017.03.22)

日本型無責任の事例

日本の組織独特の無責任な意思決定の事例を扱った本です。

牟田口廉也とインパール作戦  日本陸軍「無責任の総和」を問う
(関口高史 著 光文社新書)

日本陸軍史上で最悪の作戦と言われるインパール作戦が実施されることになった経緯を分析した本です。結果を知っている後世の人間からすれば、どうしてこのような無謀な作戦が実施されたのかと疑問を感じます。しかし、当事者たちには結果を知りませんので、様々な利害が錯綜する中で「まあ、いいか」といった曖昧かつ無責任な態度で意思決定が行なわれていたことが分析されています。
本書を読むと、「上の意向だから」「〇〇の顔を立ててやれ」「消極的な発言はやる気を疑われる」「とりあえず指示さえ出しておけば、出来なかったら現場の責任にできる」「(失敗は目に見えているが)自分からそれを言い出したら責任を問われるから」といった今日の日本企業における意思決定でも普通にみられる論理がまかり通っていたことがわかります。その結果、数万の日本兵が銃弾だけでなく飢えと疫病で死に、退却経路は白骨街道と呼ばれる悲劇が置きたのです。
本書は当時の意思決定の状況をつぶさに調べています。「自分は絶対にこんなバカな判断はしない」というのはただの思い込みかもしれないということに気づかされる一冊です。
(発売日 2022.07.12)

若手社員を理解する本

今日の若手社員を理解するための助けになる本です。

日本初! たった1冊で誰とでもうまく付き合える 世代論の教科書
「団塊世代」から「さとり世代」まで一気にわかる
(阪本節郎、原田曜平 著 東洋経済新報社刊)

今話題のZ世代より前の各世代の特性を解説した本です。
最初に確認しておかなければならないのは、「世代論はあくまでも参考情報の域を出ない」ということです。下手をするとレッテル貼りになってしまい、却って現実の理解を妨げることにもなりかねません。本書では扱われていませんが、今の新入社員が属するとされるZ世代は、特徴を絞れないのが特徴の世代とされますので、なおさらのことです。その点を理解したうえで本書を読めば、参考になる情報も多いと思います。
本書を読むことで気づくべきポイントは、〇〇世代と呼ばれる層が特定の性格を有するようになったのは、育った時代の社会・経済環境が大きく影響しているということです。「あいつらは〇〇世代だから…」というレッテル貼りではなく、「なぜそのような行動をとりがちなのか」という点について、彼らが育った環境に思いをいたすべきです。そして、「だとすれば、このような指導が受け入れやすいのかな?」という考え方をすべきでしょう。
本書で様々な世代を俯瞰することで、それを考える力が養われるはずです。
(発売日 2015.10.02)

映画を早送りで観る人たち
ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形
(稲田豊史 著 光文社新書)

ネットフリックスなどで映画、ドラマ、アニメを早送りで観て、それで理解した気分になるようなコンテンツ消費が話題になっています。若い世代ほどその傾向が強いとされていますが、なぜそのような消費性向が生まれたのか、それが何をもたらすのかを考察した本です。
サブスクにより余りも多くのコンテンツが市場に氾濫しています。若い世代では、見ていないと仲間外れになるという心理が作用し、とにかくあらすじだけでも見ておかなければ、という気持ちから早送りで話題になりそうな場面を拾いながら観るということになるようです。
これをもとに職場内のマネジメントについて考えてみましょう。たとえば上司が部下を前にこんこんとお説教を垂れるという場面があったとします。重要な部分は繰り返し説明することもあるでしょう。上司は部下のためを思って貴重な時間を割いているつもりですが、部下にとっては「時間がもったいない」「録音して後で早送りで重要部分だけを聞きたい」と思っているかもしれません。言い替えると、現代の上司はそのような相手の事情も考慮しながら指導法を考えなければならないのかもしれませんね。
(発売日 2022.04.12)

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