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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(入門編)

2.コンプライアンス講師の立場

 社内講師は外部のプロ講師の補助的な存在ではない。社内講師の行う研修こそが会社を変えていく原動力となるのである。経営改革を目指す経営者の代理人として、堂々と教壇に立つべきである。そしてその職責に相応しい仕事を実現すべく、技能の練磨に励んでいかなければならない。

社長の代理人

 コンプライアンス研修が企業の経営理念に基づく取り組みであり、コンプライアンスを重視する経営方針を組織の末端まで浸透させることを目的とすることは既に確認した。そうであるなら、その講師は経営トップの代理人として振舞うことが求められる。受講者を見下すような態度は許されないが、卑屈な態度で講義に臨んではならない。ときに「お忙しい中、このような研修にお時間をいただき、誠に申し訳ございません。」という冒頭の挨拶が見受けられる。講師として、研修参加へのお礼を述べることは必要であろうが、ここまでの謙りはコンプライアンス研修の趣旨を履き違えたものと言えよう。

内部の人材

 外部の専門家ではなくコンプライアンス部門のスタッフが研修講師を務めることの最大の利点は、社内事情を十分に理解したうえで講義ができることである。一般論ではなく「わが社のめざすコンプライアンス」を語ることが重要である。また、ある部門ではコンプライアンスの取り組みに熱心だが、他のある部門では部門長の協力が得られていない、などといった場合など、部門の事情に配慮した講義の進め方を工夫することができる点も利点であるといえる。社内で「通りやすい方法」で研修を進めることができるのである。

聖人君子ではない

 社内講師の悩みとして、決して少なくないのが、「私がコンプライアンスを語っても説得力がないのではないか」という不安である。確かに昨年まで営業の第一線で活躍し、見方によっては「行き過ぎ」ともとれる行動を行ってきた者が、コンプライアンス部門に異動したからといって、急に倫理を説くことに抵抗を感じることは想像に難くない。しかしそれも社内講師ならではの利点である。外部の「虫も殺さぬ聖人然としたプロ講師」が語るより、「昨年まで額に汗して駆け回ってきた私が言うのだから本当に大切なのだ。」という生きた言葉の方が、聞く者には感銘を与えるだろう。プロ講師のまねをする必要はないのである。

職務への熱意

 聖人君子である必要ないが、コンプライアンス浸透にかける熱意だけは受講者にひけを取ってはならない。講義はライブであり、DVD視聴などとは異なる「生き物」である。受講者は、目の前で自分に語りかけてくる講師がどの程度己の言葉に熱意と責任を持っているのか、瞬時に見抜いてしまう。適当に話をして時間をやり過ごそうという態度はもってのほかであるが、会社の経営理念を浸透させたいという強い熱意を忘れてはならない。

教える仕事への誇り

 講師という業務を「ただしゃべって帰る仕事」として理解してはならない。同じカリキュラムで同じ教材を用いて講義を行っても、「良い話が聞けた」という評価を得る講師と、「無意味な時間であった」と言われる講師がいるのである。コンプライアンス研修で語られる内容の多くは、業務でそのまま活用できるものではないかもしれない。このような研修では、単に話が上手であるというだけでは受講者の満足を得ることはできない。話の組み立てや用いるたとえ話の巧さはもとより、受講者に対する深い思いやりを持ち、相手の役に立とうとする情熱と技量が必要なのである。相手に信頼される講義を行う技術は、まさにプロの技と言えるだろう。講師として成功を収めることに誇りを持ってほしいのである。

<5 Check Points>

  1. 講師は社長の代理人であり、卑屈になってはならない。
  2. 社内事情への精通こそ、外部講師にはない強みである。
  3. 聖人君子であることを目指さず、生身の人間として語れ。
  4. 熱意のなさは、即座に受講者に見透かされると覚悟せよ。
  5. 講師という業務は、誇り高きプロフェッショナル・サービスである。